イエズス会
日本管区
堅固な土台づくりのすすめ
ブレンダン・マクマヌス 著
酒井陽介 訳
山内保憲 挿絵
1. 自己を知る
古代ギリシアの知恵は、自身の内なる旅の重要性を強調しました。それは、人が創造的で、責任感があり、自由になることを可能にするのに欠かせない自己認識をもたらします。私たちは、タレントや才能をいただいていますが、そこにはまた、影の面も付随しています。例えば、振り返って書き残したり、日記をつけたりすることは、人生の経験を思いめぐらし、そこに意味を見いだすのに助けとなります。困難な経験に取り組むために神の助けを求めましょう。それは一生を要する取り組みです。だから、私たちが長く生きるのには、そうした理由があるのかもしれません。
イグナチオ的ポイント:経験、感情、願いを振り返る力は、私たちが、この人生の旅路をしっかりと歩んで行くことを可能にします。
2. 自分の人間性を受け入れる
私たちは、身体、こころ、魂、そしてそこに豊かな賜物が複雑に混ざり合った存在ですが、同時に、自分自身を欺くための大した能力も持ち合わせています。しばしば私たちを壊しかねないような、でも反対に、もしかしたら私たちを成長させるかもしれないような未究明の願望に駆り立てられます。大事なのは、謙虚さと神の助けをもってすれば、私たちの日常や体験を豊かなものにする術を持っているということです。私たちのうちには、神や人生に向き合うものとそこから遠ざかろうとする動きがあり、私たちはこうした感情や気分を見分ける方法を学ぶことができます。この見分け方のスキルを身につけるには、学びと実践が必要になります。大事なのは、私たちの中に善と悪が共存していることを受け入れることです。
イグナチオ的ポイント:神は、私たちの深い願望の中におられるのであって、あれやこれやという表面的な願望の中におられません。
3. 自身の内にある悪と向き合う
私たちは、過去の出来事や傷、そして秘め事に縛られて、こころの安らぎと幸福を著しく制限され、苦労することがあります。これらに向き合って、例えば、カウンセラーや信頼できる友人に助けを求め、前に進むのに必要な手順を取るのは、実に勇気が必要ですが、大切なことです。
イグナチオ的ポイント:悪にあなたのこころの内を支配されないように、立ち止まって、よく考えて立ち向かいましょう。
4. 償いをする
AA(アルコホーリクス・アノニマス)がはっきりと言うように、私たちは、必然的に人生の途中で間違いを犯すものなので、可能な限り、自分がした過ちを正そうとする義務もあります。言葉だけではなく、行動で示すことに具体性と現実味があります。ですから、「ごめんなさい」という言葉は、その始まりに過ぎないのです。
イグナチオ的ポイント:自分のプライドと取り組みましょう。あなたは、許された罪人なのですから、他の人とも和解しましょう。
5. 支えとなるものを備える
完全に自足できる孤島のような人間は、誰ひとりいません。むしろ私たちは、特定の個人や組織との関係を通してはじめて、何者であるか、わかるのです。自分ひとりでは何もできないことを受け入れることは、自分を助けるために必要なサポートや人々を探し出すことを意味します。自己満足に陥る自我は、これを好まないので、それに流されないように他からの支援をしっかり備える必要があります。
イグナチオ的ポイント:いざというときに備えて、日頃の人間関係づくり、相談、責任ある行動など、しっかりとしたサポート体制を心がけましょう。
6. 日常における祈り/黙想の実践
祈りは、自分の限界を受け入れ、大いなる力を必要とし、助けを求めなければいけないので、簡単ではないように思うかもしれません。しかし、それは、電池を充電することに似ていて、充分な時間と適切な電流に接続されるならば、ショートすることはありません。それに、練習を重ねていけば、実は、難しいことではありません。聖霊が、私たちのうちで祈ってくれるからです。
イグナチオ的ポイント:神は、私たちを素晴らしい道具にするために、ご自身が受け入れられるために必要な時間をくださいます。
7. 良くない習慣を直す
物事は、認めるだけでは改善しないことが多いので、特に困難な状況では、神の助けが必要であることを受け入れ、意図的に悪い習慣を克服することに着手し、そのためにいろいろな役立つことを利用してみましょう。その心意気と態度は、イグナチオ曰く「すべてが自分にかかっているかのように祈り、すべてが神にかかっているかのように振る舞う」ことです。習慣を直すのには、7週間ほどかかると言われます。そうであるならば、今日、始めましょう。
イグナチオ的ポイント:問題の根源に神の恵みが注がれれば、他のすべての残骸は、取り除かれます。
8. 今の自分へと導いてくれた人たちに感謝する
本当に役に立つエクササイズとは、まず、振り返って、あなたを今いる場所にそれぞれの仕方で同伴してくれた、すべての人々やその親切な行為を思い起こすことです。同じように、あなたも他の人に良い影響を与え、同伴できるように、自分が持っている力を確認してみましょう。ネガティブで、後悔に満ちた循環を断ち切るのです。それは、決して良い実りをもたらしません。
イグナチオ的ポイント:感謝の態度を養いましょう。
9. 人生を振り返り、人生の目的をどの程度果たし、意味を見いだしているのかを考える
自分の下した「大きな」決断の中で行われた選択と妥協を見定めるのは、容易なことではありません。あなたは常に選択肢を持っていることを忘れないように。そして今、何をすべきか、そして、それを引き受けて生きるか、変更を加えるかどうかを知るための洞察が得られるように祈るのです。人生は、なんと言っても面倒なものです。それでも、神は必ずそこにいてくださるし、理想とかけ離れた状況の中で、意味を見出さなくてはならなくても、選択肢は残されています。
イグナチオ的ポイント:自分が生きいき感じられる使命(ミッション)の感覚に敏感であること。
10. 自分の死を見つめるー誰も死を免れない
あなたは、どのように自分の人生を振り返えりたいですか。あなたは、どういったふうに思い出されたいですか。あなたは、今そのために何ができますか。これは、何も憂鬱な憶測ではなく、むしろ、あなたが、神からの贈り物としていただいている時間を生ききるための招きなのです。私たちは、死に対して恐れることは何もないことを、イエスに従っている故に知っています。
イグナチオ的ポイント:キリストの十字架は、私たちの人生の中心です。