イエズス会
日本管区
日本管区のイエズス会員による不正行為の防止と対策
I. はじめに
1. 日本管区のコミットメント
日本管区が誠実に向き合う課題は、
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身体的、性的、心理的またはオンラインによる虐待から子どもや脆弱な大人を守り、この分野においてイエズス会員に適切な訓練と教育を与える。
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虐待またはハラスメントを報告する人に対して、直ちに、効果的に、慈悲深く対応する。
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当てはまる場合には、民法法、刑事法と教会法と教区方針に従う。
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不正行為についての報告に関与するすべての人の個人的権利を尊重し、サポートする。
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被害者と影響を被った他の人々に、正直に、慈悲深く、彼らの身体的・心理的・霊的な善益へのコミットメントをもって、手を差し伸べる。
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加害者に対して司牧的に対応する。
2. 不正行為の相談・報告する際のコンンタクトパーソン(相談窓口)
どちらのコンタクトパーソンに対しても、手紙、Eメール、電話あるいは直接会って連絡することができます。
3. ハラスメント防止対策委員会
HARASSMENT PREVENTION AND TREATMENT COMMITTEE
(以下: HPT 委員会)
3.1 HPT委員会
防止対策責任役員の任命およびHPT委員会の設置 イエズス会のハラスメント防止および苦情処
理等に対する責任者として、責任役員の中からハラスメント防止対策責任役員1名を任命す
る。また、「イエズス会日本管区ハラスメント防止対策委員会」(以下「HPT委員会」と
いう)を設置する。
3.2 HPT委員会の構成
HPT委員会は、3名以上の委員によって構成される。
2023年4月1日現在の委員構成は以下。
酒井陽介 イエズス会員:委員長 上智大学 神学部神学科 准教授
クスマノ・ジェリー イエズス会員: 臨床心理士、上智大学名誉教授
女性 弁護士、非キリスト教信者
女性 神学者(実践神学)
3.3 HPT委員会の委員の資格および選任
HPT委員会の委員は、会員、有識者のうちから、イエズス会の代表役員が任命する。
3.4 HPT委員会委員の任期
HPT委員会の委員の任期は3年とする。HPT委員会の委員は、任期満了後または辞任後と
いえども、後任者が就任する時まで、なおその職務を行うものとする。
3.5 HPT委員会委員の解任
HPT委員会の委員が、次の号の一つに該当するときは、責任役員会の議決により、当該委
員を解任することができる。
①心身の故障のため、職務の遂行に支障があり、これに耐えない場合。
②HPT委員会の委員としてふさわしくない行為があった場合
II. 定義
4. 不正行為は、
子どもまたは脆弱な大人への性的な虐待を含むが、それに限定されず、彼らへのあらゆる形
態のハラスメントを含む。
5. 日本管区のイエズス会員とは、
日本管区のメンバー、または他管区から一時的にでも日本に来て滞在し働いているイエズス
会員のことである。
6. ハラスメント(セクハラ以外)
ハラスメントとは、イエズス会員が、信徒およびその他のイエズス会関係者に対して、その優越的な関係に基づいて、使徒職としての適正な役割の範囲を超えて、身体的もしくは精神的な苦痛を与えることであり、次に掲げる行為を含む。
①身体的虐待(体罰など)
②身体的酷使
③精神的虐待(辛辣、強制的、威嚇的、威圧的、凌辱的、軽蔑的、
侮辱的、屈辱的発言および第三者にそう解釈される発言をすることなど)
④人間関係からの切り離し
⑤個の侵害(プライバシー)
参照
① 「脅し、体罰、身体的酷使、心理的ハラスメント等も、イエズス会と関連する使徒職の中ではあ ってはなりません。神の愛を経験することを妨げるような行動はすべて退けるよう、断固と した態度をとらなければなりません。」 (イエズス会総長Nicolas, 2015年5月18日)
② 厚生労働省
ハラスメントパンフ.indd (mhlw.go.jp)
7. セクシュアルハラスメントの定義
「セクシュアルハラスメント」とは、他人に不快感を感じさせる性的な関心および欲求に基づく言動ならびに性別により役割を分担すべきとする意識に基づく言動をいい、次に掲げる行為を含む。
① 容姿および身体上の特徴に関する不必要な発言
② 性的および身体上の事柄に関する不必要な発言
③ わいせつ図画の閲覧、配布、掲示
④ うわさの流布
⑤ 不必要な身体への接触
⑥ プライバシーの侵害
⑦ 性的な言動により、他の者の活動意欲を低下せしめ、能力の発揮を阻害する行為
⑧ 交際・性的関係の強要
⑨ 性的な言動への抗議または拒否等、セクシュアルハラスメントに対する正当な対応をした者に
対して、不利益を与える行為
⑩ その他、他人に不快感を与える性的な言動
III. 手続
8. 手続き
1. 報告された不祥事がHPT 委員会の対応範囲に入らない場合は状況に適切に対応する他のふさわしい場を報告者に提案する。
2. 報告された不正行為がハラスメントであってHPT委員会の対応範囲に入る場合はハラスメント調査ガイドライン(#9)に記述された手続きに従う。
3. 報告された不正行為が子どもや脆弱な大人への性的虐待であれば、指定されている民間当局に
直ちに通報する。報告された不正行為がHPT委員会の対応範囲に入る場合は、セクシ
ュアルハラスメントの相談と報告(#10)に記述された手続きに従う。
IV. ガイドライン
A. ハラスメント
9. ハラスメント調査ガイドライン(セクハラ以外)
1. ファーストコンタクト
ファーストコンタクトとは、ハラスメントに関する相談・報告を最初に受け取る人のことである。ファーストコンタクトは「セーフガーディング」のウェブサイトを通じて、あるいはイエズス会員への相談を通じて、あるいはハラスメントに関する報告を聞いた非イエズス会員の第三者からもたらされたイエズス会員への連絡を通じて行われる。
2. 書面による記録
ファーストコンタクトは、被害を申し立てた人(以下、申立人)の同意の下、相談内容が文章で記録され、HPT委員会の委員長に送付される。
3. HPT 委員会との協議
その後、委員長はこの文書を委員会の他のメンバーに送り、委員会がそのケースを正式に取り上げるべきかどうかについて意見を求める。
4. ケースを検討しない場合
委員会が、そのケースを取り上げないことで合意した場合には、申立人にその旨を伝え、他のふさわしい場についての提案を行う。特に地元の教区の「子どもと女性の権利擁護のためのデスク」を案内する。
5. 条件付きでケースを取り上げる場合
委員会が合意した場合、ハラスメント行為を申し立てられた会員(以下、被申立人)へのヒアリングを経た上で最終的な決定がなされるということを条件として、ケースを取り上げる。
6. 被申立人へのヒアリング
委員会の2人のメンバーは被申立人に事実関係についてヒアリングを行い、それを書面で記録し、他の委員に送付する。
7. 正式に取り上げるかどうかの決定
被申立人からの事実関係についてのヒアリングの結果を考慮した上で、委員会は委員の全会一致の合意により、正式にハラスメントのケースとして取り上げるか(ハラスメントのケースとして管区長に報告書を送る)どうかを決定する。
8. 調査および報告の期間
委員会がケースを正式に取り上げることを決定した場合、最初に連絡があった日から3ヶ月以内に調査を完了し、報告書および関連資料を管区長に提出しなければならない。委員会が正式に取り上げないことを決定した場合、申立て人には、#4.のように直ちに通知される。
9. HPT 委員会の決定
HPT委員会は、委員の全会一致の合意に基づき、調査結果をまとめる。この報告書は管区長に送付される。
10. 報告書の内容
報告書には、ケースの事実関係、申立人を援助する救済措置の必要性に関する勧告、および適切な場合には被申立人に対する措置が含まれる。
11. 申立人および被申立人への通知
HPT委員会委員長は、最終報告書が管区長に提出されたことを、申立人、および被申立人に遅滞なく書面で通知する。
B. セクシュアルハラスメント
10. セクシュアルハラスメントの相談と報告
HPT委員会は、セクシュアルハラスメントにかかる相談・報告の受付、事実関係の調査、申立人への助言、調停、二次被害および再発の防止、セクシュアルハラスメントを行った者に対する処分、研修・広告活動、記録の作成・保管、その他会員によるセクシュアルハラスメントを防止するために必要な対策を実施する。
11. セクシュアルハラスメントの事実への対応
(1)HPT委員会はセクシュアルハラスメントにかかる相談・報告について、次に掲げる者からの相談に応じる。
①会員によるセクシュアルハラスメントにより被害を受けた者
②他の者が会員によるセクシュアルハラスメントを受けているのを知った者
③他の者から会員によるセクシュアルハラスメントに関する相談を受けた者
④他の者からセクシュアルハラスメントをしている旨の指摘を受けた者
⑤会員から、過去にセクシュアルハラスメントの被害を受けた者
(2) セクシュアルハラスメントの相談や報告の受付
相談や報告の申し込みは、原則書面で受けるものとするが、直接来訪することも可能である。
面談 は、日時等の予約をして行う。
12. セクシュアルハラスメントの相談・報告への対応
(1)HPT委員会は、セクシュアルハラスメントに関する相談・報告を受けた場合には、関係者のプ
ライバシー、名誉、その他の人権を尊重しつつ、必要に応じ、外部の専門機関、専門家等と提
携し、真摯かつ迅速に対応するものとする。
(2)HPT責任役員から事情聴取を求められた会員は、HPT責任役員が指名したHPT委員会委員あ
るいは他の者が行う事情聴取に応じなければならない。
(3)HPT委員会の委員は、正当な理由がある場合を除き、苦情相談への対応の過程で知りえた秘密
を他に漏らしてはならない。退任後も同様とする。
(4)相談・報告に対処防止するために必要があるときは、HPT員会はセクシュアルハラスメントが
なされたイエズス会が関係する施設の責任者に対して、事情聴取その他の事実関係の調査へ
の協力を依頼、助言、勧告をすることができる。
(5)勧告を受けた関係施設の責任者は、具体的措置の実施等についてイエズス会の代表役員に対し報
告を行う。
セクシュアルハラスメント防止対策ガイドライン
13. ガイドライン制定の趣旨
このガイドラインは、セクシュアルハラスメントがまず一人ひとりを神の子として大切にするイエス・キリストの福音の教えにまったく反し、さらに日本国憲法に規定する両性の本質的平等にもとり、基本的人権を侵害する行為であることに鑑み、宗教法人カトリックイエズス会(以下「イエズス会」という)の会員(以下「会員」という)によって、イエズス会の事業または会員の業務に関連してセクシュアルハラスメントが行われることを防止し、またセクシュアルハラスメントに関連する苦情処理等の措置について必要な事項を定め、もって会員、職員等イエズス会に勤務する者、カトリックの信徒、その他会員がイエズス会の事業または会員の業務に関連して接することのあるすべての人の基本的人権を擁護し、イエズス会および会員の品位と信用を維持確保することを目的とする。
14. セクシュアルハラスメントの禁止
会員は、業務に関してのみならず生活全般において、いかなるセクシュアルハラスメントを行ってはならない。
15. セクシュアルハラスメントの防止に関する注意事項
(1)性に関する言動に対する受け止め方には、個人間や男女間、その人物の立場等により差があ
り、セクシュアルハラスメントに当たるか否かについては、相手の判断が重要である。した
がって、次の点に注意する必要がある。
①親しさを表すつもりの言動であったとしても、本人の意図とは関係なく相手を不快にさせてしま
う場合があること。
②不快に感じるか否かは個人差があること。
③この程度のことは相手も許容するだろうという勝手な憶測をしないこと。
④相手との良好な人間関係ができているという勝手な思いこみをしないこと。
⑤相手が拒否し、または嫌がっていることが分かった場合には、同じ言動を繰り返さないこと。
⑥セクシュアルハラスメントであるか否かについて、相手からいつも意思表示があるとは限らない
こと。特にカトリック教会ならびに教育機関特有の身分・立場による継続的な上下関係・従 属関係および影響力に留意し、相手から明確な拒否の意思表示がないからといって、相手方
が不快に感じていないと判断してはならない。
⑦相手が一時的には性的言動を許容する態度を示したからといって、同意・合意していると勘違い
してはならない。
⑧セクシュアルハラスメントの行為が繰り返して行われている場合、またはカトリック教会ならび
に教育機関特有の身分・立場による上下関係、および影響力を利用して行われる場合、また
は未成年者等弱い立場にある者に対して行われる場合は、悪質なセクシュアルハラスメント
となる。
⑨セクシュアルハラスメントの行為は、行われる場所、時間を問わない。例えば、イエズス会が関
係する施設(大学、学校、小教区、社会使徒職のセンター等)や職場での人間関係がそのま
ま継続する会合や行事等のような場所におけるセクシュアルハラスメントにも同様に注意し
なければならない。
⑩セクシュアルハラスメントは、男性により女性に対してなされるケースが多いが、被害者は必ず
しも女性に限定されるものではない。相手方が女性であるか男性であるかを問わず、また異
性に対するものであるか同性に対するものであるかを問わず、およそ相手方が不快・不安に
感じる性的言動は、セクシュアルハラスメントに該当する。
(12)セクシュアルハラスメントに当たるような行為をしてしまった場合には、直ちに相手に謝罪
し、相手との良好な関係の維持に真摯に努めなければならない。またセクシュアルハラスメ
ントに該当する行為を行った場合、または行ったとの訴えを受けた場合には、直ちに長上に
報告すること。
(13)セクシュアルハラスメントを受けた時には、時間を置かずに、不快であることや拒否の意思を
相手に伝えるとともに、事項に規定するHPT委員会に直ちに報告すること。
16. セクュアルハラスメントに対する処分
会員が加害者となった場合は、セクシュアルハラスメントの内容によっては、カトリック教会全体の奉仕者たるにふさわしくない非行等に該当するとして、教会法の規定およびイエズス会の規定にしたがって処分を付すことがある。
17. 教区との関係
セクシュアルハラスメントに関与していると訴えられた会員が、教区長が任命する職務に就いている場合、イエズス会の代表役員あるいはその指示を受けた支部長上は、速やかに教区長に報告する。
18. 加害者の再発防止
HPT委員会は、二次被害または再発の可能性がある場合は、加害者を職務からはずし、被害者と接する機会がないような措置を講じた上で、適切な回復プログラムに参加するよう命じる等、二次被害および再発を防止するために必要かつ適切な措置を講じるものとする。
19. 二次被害の防止と処分等の措置
(1)HPT委員会は、相談受け付け後の二次被害の防止に努める。
(2)また、次に掲げる行為を行った者について、処分等の措置の実施を、代表役員、およびイエズ
ス会が関係する施設の責任者に対し勧告する。
①苦情相談を行った者、ならびに事実調査の協力者に対する報復、報復のほのめかし、誹謗 中傷等の行為
②風説・風説の流布等により関係者のプライバシー、名誉等の人権を侵害する行為
③防止対策委員会委員等に対する脅迫、嫌がらせ行為
20. 記録
HPT委員会は、苦情相談の受付から解決までの経緯と結果を記録する。記録書は、法人本部の文書庫に保管される。
21. ハラスメント防止の研修・広報活動等
ハラスメント防止の研修・広報活動等は、HPT委員会が企画し、実施する。
22. 本規定の効力
本規定は、イエズス会が関与する学校法人などの諸規定に対して優先的効力を持つものではない。
23. 本ガイドラインの改訂
HPT委員会が提案する本ガイドラインの改訂は、宗教法人「カトリックイエズス会」の理事会の承認を得なければならない。
付則: 2010年10月17日より実施
2012年6月16日revised
2021年6月1日 revised
24. 参考資料
2016 Pontifical Commission for the Protection of Minors Guidelines Template
教皇庁 未成年者を守るための委員会ガイドラインのひな型
2019 未成年者の保護に関する世界司教協議会会長による会議、ローマ教皇庁
Meeting of the Presidents of the Bishops’ Conferences on Safeguarding of Minors
2019 Vos Estis Lux Mundi, Pope Francis
2020 Vademecum. On Certain Points of Procedure in Treating Cases of Sexual Abuse of Minors
Committed by Clerics. CDF
2021 日本カトリック司教団未成年者と弱い立場におかれている成人の保護のためのガイドライ ンカトリック中央協議会http://catholic-cwd.jp/